大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)4931号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕原告は被告に対し、昭和二八年四月三日金一三万円を弁済期同年六月二〇日の約で貸付けた外四口合計金八一万五、〇〇〇円を最終の弁済期同年七月一五日の約で貸与した旨主張し右貸金の返還を求めたところ、被告は旗提灯の製造加工販売を業とする商人で本件貸借はその営業ためにするものであるから商行為であつて、その債務は五年の消滅時効によつておそくとも昭和三三年七月一五日の経過をもつて消滅したからこれを援用すると抗争した。そこで原告は予備的主張として、かりに被告の時効の抗弁が認められるとするならば、原告は被告にたいし前記貸金合計八一万五、〇〇〇円を交付しよつて被告は右金員と年五分の利息を附した額の利益をうけ、これがために原告に対しては右額に応ずる損失を及ぼしているものであるから、被告は原告にたいし不当利得の返還として、利益の存する限度たる右金八一万五、〇〇〇円及びこれに対する昭和三九年一月二九日から完済まで年五分の割合による金員を支払うべき義務があると主張した。被告は原告の右予備的主張にたいし時効制度は単に形式的な権利の帰属を一般的立場において解決しようというのではなく、実質的な価値の移転をも認めようとするものであるから、時効完成による債権消滅は法律上の原因に基かない不当の利得とはなり得ないと抗弁した。

判決はもとより被告の抗弁を採用し、かような場合には法律上の原因なき利得といいえないとして原告の請求を棄却した。

〔判決理由〕さらに、原告は被告の時効の抗弁が容れられるとすれば、被告は原告の損失において貸金とその利子に相当する金額を不当利得するものであるから、不当利得返還義務があるというけれども、消滅時効によつて債務者が債務を免れることによつて生ずる利得は、これを終局的に実質上においても債務者に保有せしめようとする趣旨と解するのが相当であるから、債権者に損失を及ぼすとしても、これをもつて法律上の原因なき利得ということはできない。従つて原告の右主張は理由がない。(園田治)

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